夕方の縁側
まだ孫は<遺伝>という言葉を知らなかったのだ。


一般的に<ハゲ>は遺伝する確率が高い。

父親や祖父が禿げていると、その子供(男の子)も禿げる確率が高まる。


DNAの螺旋構造に組み込まれた、避けることができない運命なのだ。

そんな運命を、孫はまだ知らないのである。

いつかは嫌でも<ハゲ>の魔物が孫の頭に取り付くとも知らずに・・・




「よし、それなら床屋行って、頭丸めてくるか?」

「うん!」



おじいちゃんは、孫を連れて、床屋に行くことにした。

そしてその道すがら、おじいちゃんは言おうか言うまいか迷った。

孫に、将来ハゲる可能性が高いという現実を果たして伝えるべきかどうか・・・

そんな過酷な運命を孫は受け入れてくれるだろうか・・・





子供の純粋な質問は、ときに大人を苦しめるの。


その苦しみが、またおじいちゃんから髪の毛を一本奪うのであった。



【END】

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