バンビ
俺たちはそのまま、会場を後にした。




「なあ、ちゃんと警察とかに届け出したほうがよくねえ?」


このまま放置したら、また何度だってああいう奴はやるだろ?
いたちごっこかもしれないけど、ちゃんとしておいた方が安全な気がするし。



「私が襲われたって、おじいちゃんにバレたらまずいの・・・」


モモはずっと俯きながら、そんなことを話した。




「なんで?」


会場から大分離れた遊歩道の公園のベンチで、モモを座らせた。


「昔ね、うちのお母さんもお父さんのファンの人に襲われたことがあったの。
結構大きな事件になってさ、それを知ったおじいちゃんが、お父さんとお母さんを別れさせようとしたことがあって・・・」


私が生まれる前の話だけどと、モモは付け足すと、また大きな瞳に涙を浮かべていた。



「おじいちゃんにバレたら、今度こそビトと会えなくなる・・・
もしかしたら、またあの事務所のせいだって、お父さんのこともまた攻められるかもしれない・・・」



だから内緒にしててねって、モモが必死になって言うので、それ以上何も言えず、わかったと答えて頭を撫でててやった。







「そんな頭じゃ、帰れないだろ?
ちょっときて・・・」
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