バンビ
モモの手をひいて、遊歩道から明治通りに出ると、その近くにあった知り合いの美容室に入った。

ここの店長は、俺のライブ仲間でもあって、俺もこの店でたまにカットモデルとかしてるから、普段から顔がきくんだ。




「笹沼さんいる?」


お店はもうすぐ閉店という時間。

あと残っているのは、後片付けをしている数人だけだった。



「おうエイジ、久しぶりじゃん!どうした??」


奥のほうから、店長の笹沼さんが出てきて、いつものように笑顔で対応してくれた。




「ちょっとこの子、髪がぐちゃぐちゃになっちゃってて、今からカットしてもらえない??」


詳しい事情はやんわりとごまかして、それだけ言うと、
「ひでーなーどうしたんだよ?」って言いながら、笹沼さんはそれ以上なにも聞かずにモモを奥のシャンプー台まで連れて行ってくれた。

モモも、すいませんとペコリとお辞儀をしたあと、そのまま素直についていく。


俺はちょっとだけホッとして、ほかのスタッフと談笑しながら、そこらにあった雑誌を眺めてモモのカットが終わるのを待った。
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