バンビ
僕の父さんと母さんが付き合い始めた頃、週刊紙にそのことがばれてファンの子がうちの花屋に押し寄せてきたこと。

店をやってる以上、客としてくるファンの子をこばむことはできなかったってこと。

そしてその中には、ストーカーじみた人もいて、うちのお母さんはそいつに殺されかかったってこと・・・



「結構大きなニュースになったから、レン君も知ってるかと思ったけど・・・」

おじいちゃんは、そう言いながら、切なそうにそう話した。



「あの時はさ、二宮が必死に彼女をかばって、他人のフリをして記者会見を開いたんだよね。
あの人に別れるように言われて、彼女のためならといったん別れたんだけどさ、二人ともそれがきっかけで心が壊れちゃった。」


あの人って、きっとうちのお祖父ちゃんのことだなって、何となくそう思った。
会長さんがそんな風に呼ぶのは、お祖父ちゃんだけだから・・・




「二宮はね、やっぱりあきらめきれなくて、ちゃんとファンの子の前で正直に話したよ。
”彼女をこれ以上傷つけないでくれ”ってね。
そして、ファンの子の目の前で、堂々とプロボーズまでしたんだよ・・・・」


ビトにはそこまで出来るの?って聞いて、答えを聞かないまま無理でしょって続けた。



きっと、おじいちゃんのほうが、ずっとわかってる。
今は別れたほうがいいって。

そして、大人になって、きちんと責任もてるようになってから、改めてもう一度付き合えばいいって。




「僕だってできます。っていうか、ちゃんとモモちゃんを守りますから・・・」



ビトはわかった上で、必死にそれだけ言ったのに、おじいちゃんは「甘いよ・・・」とだけ呟いた。



「なんで?ビトはちゃんとやるって言ったらやるよ!僕も協力するから・・・」

頼むから、二人を別れさせるなんて、そんな切ないこといわないでよって、僕も必死になって言った。




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