バンビ
昼過ぎに、メールもしておいたくせに、いざカオリさんの働く図書館に着くと、なんだかドキドキしていた。


もうすぐ閉館になる時間だから、人もまばらだ…


カウンターで本の整理をする彼女を見かけて、さらに鼓動が早くなる。



なんだろ?

いままでこんなことなかったのに




「カオリさん、遅くなってごめんね。」


「あぁ、レン。やっときたの~
もう閉館だから、勉強する時間無くなっちゃったね。」


いつもと変わらない笑顔でそう言ってくれて、なんだかホッとした。


こんな自然なとこが好きなんだって、改めて思う。



「大丈夫、今日はカオリさんに会いたかっただけだから…」


思い切って、そう伝えると、「なに言ってんだか…」なんて照れながら、真っ赤になって俯いてしまう。


ちゅーか、僕のほうも頭がクラクラするぐらい熱いや…

きっと顔も真っ赤になってる。




「待ってるから、一緒に帰ろうよ!」


いつものようにやんちゃぶってそう言うと、わかったと彼女は答えて、閉館のメロディーのスイッチを押しに離れていった…


ゆったりと流れるホタルノヒカリが、少しだけ僕の気持ちも落ち着かせてくれるようだった。
< 141 / 266 >

この作品をシェア

pagetop