バンビ
「モモちゃんと付き合ってるんでしょ。」


注文が終わって一息ついたとたんに、ビトは水を一口飲みながら本題に入った。


「ああ、そうだよ。」

俺も出されたお冷を飲み干すと、いつもよりレモンがきいているのか、酸っぱくてほんのり苦味があった。




「嫌な予感って当たるんだよな、初めてエイジに会ったとき、直感でわかったんだよ、こいつはヤバイって。」


モモちゃんは元気?なんて笑顔で聞かれるから、こっちまで引きつり笑いしながら元気だよって言ってやった。



「はじめはさ、ちょっとした好奇心ていうかさ、あいつ面白いじゃん? 泣いたり笑ったり怒ったり、喜怒哀楽が激しいって言うか。」



なんだか言い訳をするように、話していたけれども、実際なんで好きなんだかは漠然としていて俺自信もよくわかっていない気がする。



「例のセフレとはもう切れたの?」

ふとそんな事まで聞かれるから、俺リンダの事話したっけと急に不安になる。



「モモと付き合うようになってからは会ってないよ。」

なんて正直に答えてしまった。でもいつまた遭遇するかわかんねーけど・・・




「ならいいや、ちゃんと幸せにしてくれないと、俺許さないからね。」


笑顔なのに目の奥底が笑っていない、そんなビトを見ながら、なんだかヤツの深い闇が見えた気がして、一瞬身震いがした。


そういえばちょっと前に、レンの父親がやってた役が、そういう男だったっけなと急に思いだしたりして。

< 186 / 266 >

この作品をシェア

pagetop