バンビ
出口のところに売店があったので、そうだなんか買ってやろうかと思って一緒に見ていた。

モモは家族にお土産のお菓子なんかを買ったあと、ずっとぬいぐるみのコーナーであれやこれや可愛いい可愛いなんか言いながら色んなのを抱きしめている。

俺はやっぱ、ペンギンがいいなあ・・・


「なんかこいつ、パンクっぽいな。」

トサカがモヒカンみたいなイワトビペンギンが自分のキャラとかぶって、なんだか親近感が沸く。

じゃあこれにしようと思って買ってあげることにした。


「これ俺の代わり」

一緒に居れない時は、こいつで我慢してくれって思いながら渡してあげたら、凄く喜んでくれたので良かった。



水族館を出る頃には丁度お昼ごろになっていた。

さてこれからどうしよいうかと思っていると、モモはまっすぐ目の前の観覧車を指差して、あれに乗りたいと言い出した。



観覧車か・・・ めっちゃ個室だな・・・ 

やばそうだなとは思ったものの、二人きりならちゃんと話せるかなと思って、気合を入れた。

「じゃあ乗るか!」



並ぶんならやだなってちょっとだけ思ったけれども、意外と空いていたのですぐに乗り込むことが出来た。

さりげなく向かい合わせに座ってわざと並んで座らないようにした。
また、気持ちが抑えられなくなると困るからな。


「あのさぁ」
モモがまたもの欲しそうな顔をするから、ドアがしまったとたんにちゃんと話そうと思って切り出した。

「しばらくは止めよう、先週みたいなことは。」

思い切ってそう言ったのに、よくわかってくれなくて何がって聞き返される。


「もうセックスはしないからな。」

そうはっきりいったら、酷く悲しそうな顔でなんでってまた聞き返されるので困った。



「大人になるまでは止めよう、ちゃんと大事にしたいからさ。」


このままずっと、会うたびにやってたら、なんかよくない気がする。
なんかあってからじゃ、今の俺じゃ責任取れないしなあ・・・

「じゃあキスは大丈夫?」

そんな風に悲しそうに聞いてくるけど、それもダメだってきっぱりといってやる。


「なんで?キスなんて、普通に挨拶みたいなものじゃない。」

そうだよな、こいつは慣れてるんだもんそういうのは、しょっちゅうビトとそうしてたんだろうなと思うと、胸がチクチクと痛んだ。


「ビトとはそうだったんだろ? でも俺は違うもん。キスしたらぜってーやりたくなるからダメ。」




今までキスした後やらなかったことなんてなかったなって、いまさらぼんやりと思い出して、自分が情けなくなった。

そういうちゃんとした順序だった恋愛って、したことないんだ。



「そんなの、我慢すればいいじゃん。」

ちょっとキレ気味にモモ言うのがなんだか面白い。


「俺そんな簡単に我慢できねーよ。」

「じゃあ大人っていくつから言うの?二十歳から?」


「そんなにはきっと待てねえなあ・・・」


そうだよなあ、大人っていくつからだろうなあ・・・
一応もう体は大人だとは思うんだけど、きっと心はまだ着いていっていない気もする。

女子は確か16歳になったら結婚できるんだったっけなあ・・・なんで男は18歳までダメなんだろう?
それだけ男の方が子供だからなのか、ただ単純に若い女とやりたい男の都合なのか・・・


「モモは誕生日九月だよな?」

前に教えてもらった誕生日を覚えている。

「そうだよ」

「じゃあとりあえず、お前が16歳になるまでは我慢するようにがんばる。」

なんかがんばるっておかしいなって思ったけど、まあいいか。



「ビトは18まではやらないっていってたのにな・・・ 俺はきっと無理。」

ぼんやりとそんなことを思い出してつぶやいてしまったら、モモの顔色が一瞬でかわってしまって、ヤバイと思った。




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