バンビ
「私はね、かずなりくんのお父さんに料理習ったんだよ。」

りんさんは高校生のとき、料理教室に通って勉強していたらしい。

お湯も沸かせないお嬢様だったっていっていて、ああほんとにここんちはそういう家なんだなって思う反面、モモは庶民的に育てられてるんだなって意外に思う。


「でも、おじいちゃんに習ったってどういうこと?その頃はまだ出会ってないんじゃないのお父さんと。」

モモが不思議そうにそうに聞いている。


「私も、結婚してから思い出したんだもん、びっくりしたよ。」

なんだかそんな風にはなしているりんさんが、なんだかちょっと嬉しそうなのが気になる。


「でも、それだけじゃないんだろ・・・」

かずなりさんがそう含んだような言葉を言うから、なんとなくわかってしまった。


「りんさんが高校生の頃って言うと、まだかずなりさんは小学生っすよね・・・」

「そうだねえ」

なんて懐かしそうに答える。

ああ、女が料理をがんばろうと思うなんて、きっと男だな。

初めて会ったときのモモが、ビトにケーキを作っていた姿をふと思い出した。


「ああなるほどね・・・」

俺が気付いたのがわかったのか、かずなりさんはふてくされている。



「なんだよ、おまえんとこには、桃はやらないからな!」

そんな風に気の早いことまでいうけど、まだ俺だってそこまでは考えてないわ。


「まあ、二十歳になったら親関係ないっすからね・・・」



そうだよな、付き合うってことは、そういうことも考えないとなあなんて、ぼんやりと思ったけれども。

気がついたら夢中に食べていたみたいで、そうめんは最後の一すすりだった。




「ああ、小百合さんの分ないじゃん、もう一回茹でてくるね。」

モモは相変わらずてきぱきと動いて、お替りのそうめんを茹でて持ってきてくれた。


りんさんと入れ替わって小百合さんがかずなりさんの隣に座ってお昼を食べると、何てことない談笑を二人で交わしている。





「あれ、そういえばレンはどうしたんだ。同じ学校だったよな確か。」

そういえば、ずっと忘れられてんなレンってば。

「彼女とデートじゃないっすかね、最近いつも一緒に帰ってるみたいだし。」

いつもあいつが色々べらべらしゃべりやがるから、俺も普通にチクってやった。


「なんだよ、あいつまで彼女居るのかよ・・・」

モモの時よりは落ち着いてるけど、やっぱりちょっとショックらしい。


「8つも年上の、図書館のお姉さんっすよ。」


「図書館か・・・どおりで・・・」


ああ、もしかして仮してやったDVD見られたなって、なんだかおかしくなった。
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