バンビ
ミヤコさんが、そろそろ始まるからって、いったんバイバイして会場に先に入っていった。

「なんかミャーコもどんどん有名になってっちゃうね。」

ナホさんがそんな風に嬉しそうに言った。
友達がバンドやってるって、なんかちょっと鼻が高いもんな。

「SKASTONSがトップだから、もう入ろうよ。」

カオリさんにそういわれて、僕達も開場したばかりの野音に入っていった。



僕とカオリさんとナホさんは、Tシャツを買うために物販に並びに行き、エイジとモモは飲み物買ってくると売店に向かった。
シンジさんは先に席に行ってるって、荷物を席に運んで行ってくれる。


「モモちゃんとエイジ君、なんかラブラブだねえ、うらやましいなあ。」

ナホさんにそんな風に言った。

そういえば、あいつらが付き合ってからまともに二人で居るの、初めて見たのかな?
付き合う前の感じしか知らなかったから、なんだか新鮮だった。

「思ったより仲良くやってるんだなあ。結構心配だったんだけどね。」

なんていうのかな、エイジが無理にモモに付き合ってやってんじゃないのかなって少し思ったんだけど、そうじゃないみたい。



無事にTシャツも買っていったん席に着くと、シンジさんしかいなくてあれって思う。

「モモとエイジはまだ来てないの?」

「なんか、後ろの方に居るみたいだよ、さっき誰かと話した後向こうに行っちゃった。」

そういわれて後ろを振り返ると、二人でいちゃいちゃしてる風な二人が見えた。


何してんだ・・・



僕はトイレに行くついでに、2人のところへ偵察に向かった。


手すりのところに寄りかかってて、後ろから見ると2人で背中から抱き合ってるみたいに一瞬見えるじゃん。


「なにやってんだよ。」

公衆の面前で、いちゃこらしないでよって思って声かけると、びっくりして二人は僕の方に振り返った。


「まあいいけどさ、程々にしてよね。あんまりあれだと、お父さんに言いつけるから。」

エイジはなんだかニヤけて、わかったよとか何とか言ってるけど、ホントわかってんのかな?

っていうか、なんか堂々とそうしてる二人が、ちょっと羨ましかっただけかもしれないけれど。





そんなことをしているうちに、ライブが始まるらしく、ミヤコさんたちがステージに出てきたので、僕は慌てて前の方に向かった。

自分達の席より前の、Aブロック手前のスペースにどさくさにまぎれて入って、僕達はそこで踊りながら見ていた。
っていうか、みるより踊っていたっていったほうがいいかな。

まだ人もまばらだったから、割と自由に席を移動できる。

ミヤコさんのバンドは、ガールズボーカルのスカパンクで、可愛くてかっこいい。
ついこの前まで小さなハコで見ていたのが嘘みたいだ。

一通り踊って騒いだ後、あっという間に終わってしまって、自分達の席にいったん戻った。

モモはどうしたかなってさっきのところを見ると、ずっと同じ場所で二人は居る。

カオリさんはビール買ってくるとか何とか言って売店に行ってしまった。


僕も何か買ってこようかなって思って、後ろの方に向かった。



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