バンビ

「あれ、レンじゃん、久しぶり。」

後ろの方に行くと、後ろから声をかけられて、振り向くと知り合いの男性だった。
人懐っこくてさわやかで高身長なイケメンのその男性は、出来れば会いたくなかった人だ。

「ヒロキさん、久しぶりですね。」

「なあ、もう何年ぶりだっけ?前会ったときまだ中坊だったもんな。」

そういいながら、あのころのように頭を撫でられる。


「カオリンとかと、まだつるんでるの?」

普通にそういわれるから、一緒に来てますよって、苦笑いしながら答えた。


「そっか、元気彼女?」

「相変わらずですよ、あっち居るから呼んできましょうか?」

強がってそんな風に言ってみたけど、後でたぶん会えるだろって、そんな風に余裕で言われた。



「でも、レンもでかくなったよな。」

懐かしそうに話すから、思い切って話した。

「あの、今付き合ってるんです、カオリさんと。」

言ったとたん、酷くびっくりされた。そりゃそうだろ、この人がカオリさんの元彼だもん。



「え?レン相手だと犯罪じゃね?」

冗談交じりでヒロキさんはそんなこと言うけど、マジですからって真剣に答えると、ああそうかってごめんって謝られた。

「レンはいいの、全然年が違うじゃん、それにあいつあれだよ・・・」


何が言いたいのか知ってるから、「わかってますから」と伝えると、そうかって遠い目をされた。



「あいつ本気で、ショタだったんだな・・・」

小さな声でそういわれたけど、そんなんじゃないですよって反論した。


「年とか関係ないです。」

この人が何で別れたか、ちゃんと知ってるから、少し腹が立っていたのかもしれない。
何でちゃんと、大事にしてあげなかったんだって。


「それと、もう前とは違いますから、カオリさんも。」



「それって、もうやったってこと?」

そんな風に言われて、うなずいた後、悔しくてうつむいた。
だって、どう考えても、ヒロキさんの方がつりあってるもん。

「あいつが、マジで?嘘だろ?」

「嘘じゃないです。」

何でこの人は余裕なんだろうな、はじめからカオリさんのことはどうでもよかったのかな?

「あいつ初めはあんなにアピールしてきたくせに、いざそうなると拒否られたんだぜ、俺。
もう一生バージンでいればいいじゃんって、言っちまったもん・・・」

なにが違ったのかなってヒロキさんも真剣に考え込んでしまった。


「ヒロキさんは誰でもよかったんじゃないですか。」

僕は、カオリさんじゃなきゃダメだったからってそう言ったら、ああそうかもなってなんだか変に納得されてしまった。


「俺さ、女なんて適当に遊べればいいんだよな、結婚とか絶対したくないし、俺の遺伝子のこんのなんてなんか気持ち悪くない?」

さわやかな笑顔で、かなり深いえぐるようなことをいきなり言い出すからちょっと引きそうになる。


「俺は俺一人でいいんだよ。レンにはまだわかんないかな? まあ、そういう男も居るんだよ。」




何を言って言いかわからないで居ると、ふと聞き覚えのあるメロディが響きだした。



「おっ! もうでるのかよ、POTSHOT!」

それは、今回のステージで再結成されたバンドで、僕がライブに行きだすずっと前に解散してしまった伝説のバンドだった。

「行こうぜ!」

何故か僕は、ヒロキさんにつられて前の方に走り出していた。



”この青い空の下 夢なら溢れるほどある”

英語のそんなメロディが僕の頭の中で鳴り響く





もうどうでもいいや、僕はここで青空の下このスカのリズムに浸っていられれば。

考えるのは、もうちょっと後でもいいよね?


< 227 / 266 >

この作品をシェア

pagetop