バンビ
「ただいま・・・」

「あ、お帰りなさい。」

2人で声があってしまってそう答えると、いつものように嫌そうにかずなりさん睨まれる。

「お前、また来たのか・・・ちゅーか何時だと思って・・・」

そういいかけながら奥の居間にいる団体に気付いて、ああと溜息をついていた。
いつものことなんだろうな・・・しょうがないと思ったのだろうか。


「今日は蓮の彼女も来てますよ。」

ニヤつきながら教えてあげると、速攻どのこだよなんて言いながらみんなのところに行ってしまった。



「相変わらず面白いな、かずなりさん。」

あの人の親バカぶりは、何時見ても微笑ましいと思う。


「そういえばお父さん、例のシャツよく着てるよ。気に入ってるみたい。」

「ああ、ジュンさんが買っていったヤツ?」

そうきくとうんとモモはうなづいた。



「そうかよかった。あの人、服とかに無頓着そうだからな・・・」


あの人のイメージは、天使と悪魔って感じだなと思っていた。だから白と黒両方を勧めてみたんだ。
大人の男の色気もある人だから、ちょっとセクシーめのヤツをね。


「このTシャツも凄く好きだったの、欲しかったんだあ・・・ありがとうね。」

「お礼はジュンさんに言えよ、俺が買ったんじゃねーもん。」

モモはずっと気に入ってくれているのか、今日はずっとそのTシャツを着たままだ。
みんなはライブ後汗かいたからって着替えてたけど、モモはそのままだった。


「でも、誕生日買ってやろうと思ってたんだけどな、どうしようかな・・・」


なんとなく、モモに服を作ってやろうと思っていることは、まだ言えずにいた。


そうだ、来月はモモの誕生日だ・・・

あの約束、守れるかな? 今だって相当がんばって我慢してるのに・・・




「おい、お前たちもこっちにきなさい。」

かずなりさんに呼ばれて、俺たちも作った料理を運びながら、みんなの団欒の中にくわわった。


モモはやっと何か適当に食べていたけれども、夜遅いからかそんなに食べていない感じ。

「今日は疲れただろ、腹減ってないの?」

まさか必要なさそうなダイエットとかしてるわけなじゃないよなって思ってたけど、

「なんだか、今日は楽しくて、胸いっぱいでお腹もいっぱいなんだよね・・・」

俺の顔を見てにこっと笑うと、すぐに恥ずかしげにうつむいてしまった。


それを見ていたカズさんに、また冷やかされるので、ああやっぱ飲んでないとやってらんないと思ったけど、今日はそれからずっと酒は飲まないで我慢していた。


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