バンビ
それからモモはすぐ自分の部屋に戻ってしまったらしく、こっちにくる気配はなかった。

俺たちはお茶を飲み終わると、さっさと電気を消して寝ることにした。



だけど、さっきのモモの浴衣姿が気になりすぎて、眠れない・・・

自分の部屋なら、自己処理して眠ることも出来るけど、人んちでそんなことも出来るわけもなく・・・



浴衣か・・・いいな浴衣・・・

浴衣といえば、花火大会だよな・・・


一緒に行きてぇなぁ・・・


これからはきっと、そういう普通のデートも出来るようになるんだと思うと、楽しいことばかり考えてしまう。




だけど、最終的にはやりたいって思ってしまうのは、何とかならないのか。




レンもシンジさんも、ぐっすり眠ってるみたいだ。
そりゃそうだろ、何時間も炎天下の中、踊ったり騒いでたりしてたんだ。





”眠れない”



もう寝てるだろうなってわかってたけど、モモにメールを送ってしまった。



”私も目が覚めちゃった”



送ってすぐに、そんな返事が返ってくるから、何だか通じ合ってるみたいで嬉しかった。




ちょっとだけ、ちょっとだけだよ、モモに会いたい・・・

そう思いながらこっそり部屋を出ると、丁度モモも部屋から出てくるところだった。



「エイジ君もトイレ?先いっていいよ、私下ですませてくるし。」

そんなこと言われるけど、トイレじゃねーし。

ああ、抱きしめたいって思ったら、そのまま手を取って引き寄せていた。


「待ってたのにこねーんだもん。」

「ああ、さっきのお茶?お父さん持っていってくれなかった?」


モモが不思議そうに、腕の中で俺の顔を見上げながら言う。

もうこいつは天然かよ、わかってねーのかよってもどかしいけど、そこも可愛い。


「もう一回浴衣のお前見たかっただけ。気になって眠れなかったじゃん…」

彼女の首筋に顔をうずめると、さっきのお風呂にあったボディシャンプーの香りがした。



ああ、このまま気づかれないようにどっかに2人でいきたい・・・

なんて無理だから、もう寝よう。




「ごめん、ちょっと落ち着いたから、もう寝る。おやすみ」


レンの部屋に戻って横になると、やっとぼんやりと眠くなってきたので、数時間だけ何とか眠りにつく事が出来た。
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