バンビ
山下も同じカフェオレを買って、隣で飲んでいる。

同じ冷たくて甘い飲み物を共有していると思うと、何だか不思議な気持ちだった。


「別に普通だよ、僕なんかまだまだレギュラーにもなれないし、こうやって人より練習しないと追いつかないんだよな・・・」


でもな、みんなと同じように練習したって、なんになるんだろう?たまにそう思う。
昔お父さんが監督役をしていた高校野球のドラマを見たときに、人とは違う努力をしなくちゃだめだって思ったんだけど。


「二宮ってさ、なんか他のヤツにない余裕みたいなのがあるよな。さっきのバッティング見ててそう思ったよ。何なんだろうな・・・」


他とは違うことかあ、なんだろうな・・・


「野球以外のこともやってるからかな・・・ 他の部員は、野球ばっかのヤツが多いし。」

例えば何って聞かれたので、パンクバンドのライヴとかよく行くんだよって言ったら、どんなヤツって聞かれたので、携帯に入れている音楽を聞かせてあげると、いいじゃんってなんだか気に入ってくれた。


「やっぱさ、野球ばっかじゃダメなんだろうな・・・ うちの高校なんて偏差値低いし、勉強だって俺出来ないしさ、だから野球ばっかやってたけど、みんなと同じことばっかやっててもダメな気がしてきてさ。」


僕の高校も、山下の高校も、結局は準々決勝で敗退してしまったんだよな。




「僕もそれ考えてたよ、何か違う努力をしないといけないんじゃないかって。
弱くても勝てる方法とかさ・・・」

「普通弱かったら負けるだろ。」

そういって奴は笑ったけど、そうじゃないんだよな。


「昔のドラマ知らない? 野球はさ頭脳戦でもあるんだよ。弱かった高校が弱いまま勝つ話があったんだ。」


しらねーなーっていわれたので、小説もあるから読んでみたらって薦めたら、本は読まないからなって言われてしまった。


「あ、でも二宮が聞いてるその音楽、俺好きだな。今度色々教えてよ。
なんかさ、どこかでストレス発散したいからさ・・・」


そんな風に言ってくれるのが何だか嬉しくなって、僕達はメアドの交換をして、今度CDとか仮してあげるよって約束をして別れた。


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