バンビ
うちは自営業の花屋をやっている。

店先からただいまーって帰ってくると、パートで働いている小百合さんがお帰りなさいって迎えてくれた。


「あらレン君、今日はお友達と一緒なのね?」

「うん、母さんは?」

小百合さんにそう聞くと、奥でモモと一緒にケーキを焼いてるよって教えてくれた。


小百合さんも綺麗な人だから、そんな彼女を見てエイジは照れながらドーモとかいって挨拶をしていた。


「まあ、あがってよ。」

僕はエイジを奥の居間に通すと、ちゃぶ台の前に座らせて台所の母さんを呼びにいく。



「ただいま。ねえ、エイジがきてくれたよ。」


「ああ、もうきちゃった?今ケーキ焼けるから・・・
エイジ君、いらっしゃい!コーヒー飲めるっけ?」


今淹れてあげるからねって言って、母さんはミルを出して豆を挽きだした。


「ああ、お構いなく、なんでもいいっすよ。」

エイジはきょろきょろしながら、興味深そうにうちの中を眺めていた。




「なんか、おばあちゃんちって感じだな・・・」




お店とガラスの冊子で仕切られた、畳敷きのうちの居間は、大人たちには評判らしく、エイジも何となく気にいってるみたいだった。


「なんかね、母さんのおばあちゃん代わりだった人が昔住んでたとこで、
母さんが結婚する時にリフォームしたんだけど、ここだけ昔のままにしておいたんだって。」

へえって、いいながら、テレビの周りのゲームなんかも色々散策し出していた。


「なんか、古いゲームソフトもいっぱいあるのな。」

「ああ、それ父さんの。」


お前はやんないのって言われて、たまにやってるよって答える。

最近は、もっぱらモモと彼氏のビトが使ってばかりいるけど。
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