バンビ

「モモ、なんかゴメンな、やっぱ一緒にいてやればよかったな。」


モモが座っている前に俺は膝間付くと、彼女の手を取って握り締めた。


「エイジ君怪我してるじゃない、ちゃんと手当てしなきゃ･･･」

自分のことなんかお構い無しに、右手からずっと流れてる俺の血を見てオロオロしている。



「こんな傷イタかねーよ、お前の方が辛かったろ･･･」



身体の傷は次第に治るけど、心の傷はそうはいかないもんな･･･



「もうずっとそばにいるからな･･･」


そんな風に言うと、モモは急に泣き出す。




「そうじゃない、そうじゃないんだよ、私が弱いだけ。もう一人で何でも出来なきゃいけないのに、
エイジ君をそんな、縛りたくないから･･･」

モモの涙をぬぐってやると思わずキスがしたくなって顔を近づけた…



「ああ、青春だねぇ～　良いなぁ～」


あ、忘れてた、べべがいたんだった…


二人で真っ赤になって照れながら振り向くと、ずっとにやにやしながらべべとレンがこっちを見ている。


「別に続けてもよかったのに。」


レンがそんなことを言うから、うるせーって啖呵を切った。


「なんか思い出しちゃうなぁ、ジュンと別れたときの事。モモちゃんとおんなじことを考えてたなぁ。」


そんな別れたってどういう意味だ？
今は結婚してるじゃねーかってふと思う。


「ああ、あの初めてNYで仕事始めたってときの事？」

レンも知ってるみたいで、そう話している。


「私もさ、ジュンを縛りたくないって思って一回身を引いたことがあったんだよね。
まあ結局、ビトが出来てたから、別れられなくなっちゃったけど。」

それって、なんだかうちの親もそうだったなって思う。いわゆる出来ちゃった結婚ってヤツだ。


「なんか意外っすね、ちゃんとしてそうなのに。」


「恋は溺れていくものだからねぇ…」


べべがなんだか意味深なことを言うので、そんなものなのかと思う。



「とりあえず、医務室いっておいで。さっきからモモちゃんおろおろしてるし。」



そうせかされて、いつもはこんぐらい放っておくんだけどなって思いながら、モモと二人で医務室にいくことにした。