バンビ
日もすっかり落ちたステージに、真っ白なシンプルな照明を浴びて、LieWooのライヴが始まった・・・


出だしのギターが鳴り響いたとたん、全身がしびれるような感覚になってぞくぞくする。なんだこれ!?


ガツンと鼻の奥に響くようなドラムとベースのリズムと、胸に直接響いてくるようなギターのカッティング。
そして何よりも、アケミさんの独特なボーカルがやたらかっこよくて、ああ何だか泣きそうになっていた。


「スゲーかっこいい!」


もうステージから目が離せなくなって、身体を震わせながらかぶりつくよいうに見ていた。


お母さんが好きだったバンドだ・・・きっと僕のDNAがそれを欲してるんじゃないかなって思った。


みんなもきっと、大好きになってるだろうな・・・テレビでたまに見るときとは全然違うもの。





一通りLieWooを見終わると、次はとうとうオーラスのべべさんの出番。


一気に会場全体が盛り上がっていくのがわかる。毎年のことだ。

イベントの終わりを告げるように、会場全体がオレンジ色のライトに染まる。


べべさんの歌声は、毎年聞惚れるけれども、今年は正面からステージ全体も見れるので圧巻だ。


会場全体がゆったり踊りだす


レゲエのメロディにあわせて会場中が愛と平和で満たされるような、そんな幸せな空間に変わっていく。


僕は自然と、カオリさんの手をぎゅっと握り締めていた。

そうだ、毎年こうしてこのイベントには来ていたけれど、二人で一緒にこのステージを見るのは初めてだ。


僕達の愛はきっとできたてほやほやで、まだこれから先のことはわからないけれども、べべさんの歌う”愛こそすべて”が、正解のような気がした。



会場中が大合唱になる・・・


僕はきっと、このオレンジ色の風景をずっときっと忘れないだろうと思う。




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