バンビ
「違うでしょ?好きなもの同士が一緒にいたんだもの、なにも言わなくたってそういうのは付き合ってるって言うんだよエイジ君!」


カオリンはどこまで知ってるんだろうか?
そんな風に言われたのは始めてで、何をいったらいいのかわからなくなる。


「あいつがそう言ったのかよ…」

「そうだよ、ちゃんとリンダちゃんからホントの事を聞いてよ。
女の子はね、好きと嫌いだけで、普通なんてないんだよ!」


カオリンの言うことは、ふざけてるっぽく聞こえるけどマジなんだろうなって思う。

でも、どうしてもリンダがそんなこと言ったのかは信じられないんだ、ずっとそんなわけないって思っていたんだから。

ほんとにレンといいこの二人は、おせっかいでずうずうしいって言うか。
でも、それで救われてんのかな、俺もモモも・・・



なんだかんだいって、カオリンの方が年上だし、俺たちとは違う経験もしてきたんだろうなって思う。

「よくわかんないけどさ、僕もリンダさんのことはちゃんとしたほうがいいと思うな・・・
ビトだってさ、ああやって今モモとちゃんと話してるじゃん、今まで色々言えなかった事をさ。」


何だよ、何もわかってねーの俺だけっぽいじゃないか・・・


「レンは知ってたのか、ビトのこともリンダのことも。」


「リンダさんのことは、ぶっちゃけわかんないよ、この前初めてまともに話したんだし。鉄さんがそうしたほうがいいんじゃないかって言ってたらしいからさ・・・
でも、ビトのことはわかるよ、僕らが一番付き合いが長いんだから。」



ああ、親父が絡んでんのか・・・

親父のことも勝手に拒否って、リンダのこともうやむやにして、このままでいいわけないよな・・・

あの時のかずなりさんの言葉を思い出す、やっぱ俺はただの反抗期なガキなだけなのかな?


「わかったよ、ちゃんと会うよ。モモも一緒に連れてく。」


カオリンにそういうと、やっと二人は安心したようによかったとまたガンガンピザを食べ始めていた。


「お前食べすぎじゃね、夜中に・・・もうあんま残ってねーじゃんw」

アキラがあきれてレンのことを見ていうけど、こいつはいつもこんな感じだって教えてやる。



「あやばい、これは二人に残しとかないとな・・・

ねえ、早く食べないとさめちゃうよ。」


そろそろ話しも終わったころかなって思ったのか、レンがビトとモモに声をかけると、すぐに二人はこっちに来て仲よさそうにピザを食べ始めていた。


その雰囲気が、またよりがもどっちまうんじゃないかと不安にさせる。


「なんかダメなものって、どうして美味しいんだろうなあ。」

モモが幸せそうにビザを食べながらそういうのが、可愛くて悔しくなる。
カオリンが持ってきたビールは、いつの間にか俺が全部飲み干していた。


「モモちゃん、夜中は食べないでしょいつも?」

カオリンにそう聞かれて、ああそうだねって答えてる。


「小学生のときぶりとかかもなぁ・・・」


やっぱこいつは、何気にダイエットとかしてんだろうな・・・

寝る前にストレッチしてるとかカオリンにばらされて、ビトがまだ続けてるのかって笑っている。


きっとビトのために続けていたんだろうなあ・・・そんなことする必要ないのに。

「あれだろ、ビトにあわせてたんだろ?」

アキラも同じことを思ったのか、そんな風に突っ込んでいる。


ちょっと酔いがまわってきたのか、ずっと溜まってたからなのか、モモを見つめているとあの初めてやった日を思い出す。

華奢な身体で腰骨が当たって痛かったなんて思い出しちまって・・・


「俺はもうちょっと太っててもいいと思うけどなあ・・・痛てえし。」


ちょっと心の声が漏れた・・・


「バカ、何言ってんだよ。酔っ払ってんのかよ。」


「もう、そういうことは僕の居ないとこで言ってよ。」


レンとビトに即効怒鳴られて、やばかったなって思うけど、モモはけろっとしてるからまあいいかなって思う。


カオリンはそういうこと疎そうだな・・・ってか、アキラはまったくわかってないみたいで、ああこいつは童貞なのかって思う。





「モモ、ちゃんとビトと話せたか?」


やっとモモとまともに目があって、笑いかける、何だかいつもより優しい表情をしているように思えた。


「うん」

やっぱり俺は、たとえ誰の事が好きでも、こいつの事が好きだなと思う。

だから、自分の気持ちにもケリをつけねーとな・・・




「俺もちゃんと話してくるよ、リンダと。」


「うん、わかった。」


モモがまっすぐに俺の目を見てそういってくれた




< 252 / 266 >

この作品をシェア

pagetop