バンビ
サマソニが終わって次の週末、俺たちは待ち合わせをして親父の働いている居酒屋に行くことになった。
正直心が重い。
久しぶりにリンダに会いに行くんだなと思うと、今までどんな顔をして会っていたのか思い出せなかった。
もうあれから2ヶ月ぐらいたったかな?
ラフォーレで偶然会ったときは、まだモモと付き合ってなかったもんな。
でも、あの時に会わなければ、きっとモモがいきなり告ってくることもなかっただろうし、俺もあんなことしなかったと思う。
まだ俺たちも友達のまま、宙ぶらりんな関係のままだったかもしれない。
最寄り駅から親父の店まではすぐで、俺はモモと手を繋いだまま歩いていた。
いつもよりお互いの手が汗ばんでいるのがわかる。
レンとカオリンは、わざとどうでもいいような雑談を繰り返して、モモも一緒にそれに話しをあわせている。
”懐かしい思いが歩道に溢れ出して夏の光に跳ね回る・・・”
頭の中でそんな昔の歌がぐるぐると回っていた。
居酒屋の暖簾をくぐると、「いらっしゃい!」とのぶとい声で親父が言う。
ああ、俺はこの雰囲気を知っていると思った。
カウンターに居た親父がこっちにやってきて、俺たちに奥のテーブル席を案内すると、カウンターの横にリンダが座っているのが見えた。
一瞬目が合った気がしたけど、すぐに目線をそらされてしまう。
相変わらずだなって思う、いつもあいつはそうやって逃げるんだ。
席についてカオリンだけビールを頼むと、「お前には飲ませねーからな」ってわざわざ親父が釘を刺してくるので、仕方なく他の三人はとりあえずウーロン茶を頼む。
そんなことをしてると、カオリンがカウンターに居たリンダをこっちに引っ張ってきて、俺の斜向かいに座らせた。
モモは俺の隣の奥の席で、不安そうにその様子を黙ってみている。
「ひ、久しぶりだね・・・」
リンダは俺の方には眼も合わせずに、レンに向かってそんな風に言うからレンも適当に挨拶していた。
「エイジ何年ぶりだ、ここに来るの? 子供の頃は毎日来てたんだぞ。」
そういわれて、そういえば懐かしい気がしたんだって思った。
「覚えてないか・・・昔は2人でずっと暮らしてたのにな。
ここさ、バンド連中みんな来るから、色々遊んでもらってたんだぜ。」
ああそうか、だからどのライブ行っても、みんな俺が親父の息子だって知ってたんだな・・・
親父がドリンクのオーダーを取り終わると、さっさとカウンターの中に戻ってしまうので、しばらく気まずい雰囲気になる。
こんな状態で何を話せって言うんだって思う。
「話があるんでしょ、ちゃんと話していいよ。」
カオリンも引きつったように笑いながら言うけど、無理だっての。
さっきまでずっと繋いでいた手を、モモが静かに離して、俺の手の甲を二回叩いた。
大丈夫だよって、モモの心の声が聞こえたような気がした。
「やっぱ無理だわ・・・」
そう、ここじゃまともに話せるわけない。
俺は立ち上がってリンダの手を引き、店を出ることにした。
「モモ、俺ちゃんとけりをつけてくるから、待ってろ。」
モモは小さく頷いていた。
正直心が重い。
久しぶりにリンダに会いに行くんだなと思うと、今までどんな顔をして会っていたのか思い出せなかった。
もうあれから2ヶ月ぐらいたったかな?
ラフォーレで偶然会ったときは、まだモモと付き合ってなかったもんな。
でも、あの時に会わなければ、きっとモモがいきなり告ってくることもなかっただろうし、俺もあんなことしなかったと思う。
まだ俺たちも友達のまま、宙ぶらりんな関係のままだったかもしれない。
最寄り駅から親父の店まではすぐで、俺はモモと手を繋いだまま歩いていた。
いつもよりお互いの手が汗ばんでいるのがわかる。
レンとカオリンは、わざとどうでもいいような雑談を繰り返して、モモも一緒にそれに話しをあわせている。
”懐かしい思いが歩道に溢れ出して夏の光に跳ね回る・・・”
頭の中でそんな昔の歌がぐるぐると回っていた。
居酒屋の暖簾をくぐると、「いらっしゃい!」とのぶとい声で親父が言う。
ああ、俺はこの雰囲気を知っていると思った。
カウンターに居た親父がこっちにやってきて、俺たちに奥のテーブル席を案内すると、カウンターの横にリンダが座っているのが見えた。
一瞬目が合った気がしたけど、すぐに目線をそらされてしまう。
相変わらずだなって思う、いつもあいつはそうやって逃げるんだ。
席についてカオリンだけビールを頼むと、「お前には飲ませねーからな」ってわざわざ親父が釘を刺してくるので、仕方なく他の三人はとりあえずウーロン茶を頼む。
そんなことをしてると、カオリンがカウンターに居たリンダをこっちに引っ張ってきて、俺の斜向かいに座らせた。
モモは俺の隣の奥の席で、不安そうにその様子を黙ってみている。
「ひ、久しぶりだね・・・」
リンダは俺の方には眼も合わせずに、レンに向かってそんな風に言うからレンも適当に挨拶していた。
「エイジ何年ぶりだ、ここに来るの? 子供の頃は毎日来てたんだぞ。」
そういわれて、そういえば懐かしい気がしたんだって思った。
「覚えてないか・・・昔は2人でずっと暮らしてたのにな。
ここさ、バンド連中みんな来るから、色々遊んでもらってたんだぜ。」
ああそうか、だからどのライブ行っても、みんな俺が親父の息子だって知ってたんだな・・・
親父がドリンクのオーダーを取り終わると、さっさとカウンターの中に戻ってしまうので、しばらく気まずい雰囲気になる。
こんな状態で何を話せって言うんだって思う。
「話があるんでしょ、ちゃんと話していいよ。」
カオリンも引きつったように笑いながら言うけど、無理だっての。
さっきまでずっと繋いでいた手を、モモが静かに離して、俺の手の甲を二回叩いた。
大丈夫だよって、モモの心の声が聞こえたような気がした。
「やっぱ無理だわ・・・」
そう、ここじゃまともに話せるわけない。
俺は立ち上がってリンダの手を引き、店を出ることにした。
「モモ、俺ちゃんとけりをつけてくるから、待ってろ。」
モモは小さく頷いていた。