バンビ
家に帰ってくると、丁度ビトも帰るところだった。
バイバイしようとしたら呼び止められたので、暫くうちの裏口で立ち話をした。


「なんかさ、エイジって面白そうな人だね。」

笑顔でそう言われて、実際面白いよって色々教えてあげたり。




「僕のこと知ってる人はさ、ミーハーなことばっか聞いてくる奴が多いけど、あいつはそうじゃなかったしな。
同じ歳にしては、色んなこと知ってそうだし・・・」


ビトの周りには、今までいないタイプだったんだろうな。
僕もそう思うもん。
なんとなく、モモに気があるっぽいのは気になるけどね。



「モモちゃんもさ、いつもと違う態度だったから、気にしてるのかなって思って。」

あ、やっぱビトもわかるんだなって思って、どうごまかそうかちょっと考えた。



「エイジは好きな人がいるし、モモのことは友達の兄妹だから、ちょっと興味があるだけなんじゃない。」


そうなんだって、気のない返事をするビトは、ちょっと複雑そう。

仲良くなれそうな奴なのに、モモをとられたら嫌だって、そういう葛藤もあるのかもね?

「モモちゃんさ、いつも違う男の前だと、もっと愛想がいいじゃん?
今日はなんていうかさ、ちょっと不機嫌で・・・
レンと一緒にいるときみたいな、自然な態度だったっていうか、
ああいう態度するときってレンの前だけじゃん。」


僕の前だと、いつもニコニコしてるのにさって言われて、そういえばそうだったなって思った。
カズおじさんも、さっき同じこと言ったな。



「モモはビトに惚れてんだもん。
嫌な顔見せたくないのは、当たり前だよ。」


出会ってからもう13年近くもモモの事が好きだって言うのに、ビトはいまだに何となく不安な時があるってたまに僕にぼやく。



あいつ、素直じゃなかったり、わざと突き放したり、結構駆け引きとかするからな・・・
それだけ、ビトの気持ちを繋ぎとめていたいって証拠なのはわかるけどさ。


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