バンビ
「さっき試しに作ってみたんだけど、味見てくれない?」


それは、この前のチーズケーキみたいな、本格的なガトーショコラだった。

「ああ、これならいけそう。またビトに作ってんの?」

そういいながら、味見してみたら、あんまり甘くなくて好きな味だった。


「美味いじゃん・・・」


それだけ言って、コーヒーを飲むと、こっちもかなり美味しかった。



「ありがと。
なんかね、暇だからいろいろ作ってみようかなって思ってさ・・・」


モモは、気持ち悪いくらいニコニコしながら、ケーキを食べつづける俺の姿をじっと見ていた。

なんか、そんな風に見られると、ちょっとテレる。



「なんだよ」

「いや、べつに。
結構お行儀よく食べるんだなって思って・・・」

そういって、またニコっとされた。




「あ、そういえば、今日はレンと一緒じゃないんだ?」

思い出したようにそうきかれて、あいつは部活で遅くなるって言ってたよって教えてあげる。


「俺ら、そんなにしょっちゅうつるんでるわけじゃねーしな。
あいつ、忙しいみたいだし・・・」


そうなんだって、モモはちょっと淋しそうにする。


「レンとは小学校の頃まではいつも一緒にいたのに、中学に入ってからは部活ばっかなんだよね。
週末とかも、友達と遊びに行っちゃうしさ。」



お前も友達と遊べばいいじゃんって言ったら、たまには遊んだりしてるよって曖昧な感じで答える。

彼氏のビトも、あんな仕事してるんじゃ、あんまかまってもらえねーんだろうな・・・



「お前、いつもまっすぐ帰ってきて、家に篭ってんの?」

何となくそんな気がして、そうきいたらウンって小さく頷いた。


「なんで?」

「あんまり目立つ事してると、色々面倒だから・・・」

ああ、アイドルと付き合ってるから?って聞いたら、ソウってまた小さく頷いた。



「中学の頃は、友達がみんな味方になってかばってくれたけど、高校になってからは仲のイイコと違う学校になっちゃって・・・
同じ高校の子とかには、内緒にしてるし。」


いろいろ大変そうだなって言ったら、溜息をついて自分の分のコーヒーを飲み干していた。
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