バンビ
「うわ、お前それはよせ!」


氷を入れたグラスに注いだそのお酒は、透き通ってきれいで、思わず一口飲んでしまったら、さっきまで飲んでいたお酒の何十倍も喉が焼けるように熱くなって、思わず吐き出しそうになった。


「お前なーそれジンだぞ・・・そのままじゃ無理だろ。」


そういうのはまだお前には早いからって、今度はきりっと冷えたお水を手渡された。


「ああ、ありがとう・・・」



でも、なんか不思議な感じ?

甘いお酒も美味しいと思ったけど、辛くてヒリヒリするこういったお酒のほうも、なんか嫌いな味じゃないなって思えた。


小さい頃、父さん達の飲んでる酒をいたづらして飲んだりしたときは、なんてまずいんだろうって思ったのに。









なんか妙なテンションになってきていたら、みちるさんに食事の用意ができたと、ダイニングの方に呼ばれた。


テーブルの上には、パスタとサラダなんかが綺麗にセッティングされていて、なんかうちの庶民的な食事とはちょっと違うなーなんて気もしたりして。


「エイジ、レン君はお前と違って真面目なんだから、あんまり飲ませちゃダメだよ?」


3人でテーブルについて食事をはじめると、そんなことを笑いながらみちるさんは言った。


「べつに、こいつが勝手にガンガン飲んでるだけだもん・・・」


エイジは食事中も、相変わらずビール片手に黙々と食べる。


「美味しいですね~♪
うちは結構和食が多いから、こういうのも良いなあ~♪」


酔っぱらってきたのか、いつも以上に饒舌に言葉が出てくる気がする。

みちるさんは、そんな僕とエイジを見て、始終ニコニコしていた。



「いつも二人っきりだからさ、誰かいるといいよね?」


みちるさんも、ビールを飲みながら嬉しそうに答えてくれる。



「うちは、いつもいっぱい人がいて、うるさくてしょうがないですよ。
いっつも父さんや母さんの友達がきて、宴会してるの。」


そう言ったら、なんか羨ましいなーって言われたので、今度遊びにきてくださいよって、勝手に調子よくそんなことまで口走ってしまった。

まあ、母さんならいつでも誰でも、大歓迎してくれそうだけどね。
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