バンビ
「なんか凄いですね~♪
うちの父さんなんか、何もやんないですよ、料理とか。」


レンは愛想よく、ニコニコと話しているのが、なんかちょっとムカツク・・・

こいつ、ほんと誰とでも仲良くなる天才かも?


トーストに味噌汁かよ・・・とか思いながら一口飲んだら、まあまあだったけどいつもの味じゃなくてちょっと不満。


「まずい・・・」


そういって味噌汁のおわんを置くと、目玉焼きにたっぷりケチャップをかけて、パンにのせてそのまま食べた。


レンはご機嫌で、美味い美味いとか言いながら、ガツガツ食べてる。



「まあ我慢してくえや・・・お前、弁当とかいらねーの?」


親父は、レンにもコーヒーをいれながら、そんなことを不意に言った。

なんか気持ち悪いくらい、今日は父親っぽい事言うな。


「今日は土曜だから、いらねーよ。」

残りの味噌汁を飲み干すと、親父はやけに嬉しそうにそうかって笑った。




「ごちそうさま・・・ほら、レンそろそろ行くぞ!」


俺は食べ終わった食器を片付けると、レンを急がせて部屋にカバンを取りに行った。


「ああーまってよー。」


慌ててレンも食べたものを片付けて、部屋に戻ってカバンを取ると、急いで玄関で靴を履いた。


まあウチから学校まで5分ぐらいだから、まだ余裕で間に合うんだけどさ・・・



さりげなく父さんを無視してる俺を尻目に、レンは元気よく行ってきまーすなんて言ってる。





なんか、ほんとこいつといると、調子狂う。

いつも父親と会話らしい会話なんてしたこと無かったのに・・・
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