バンビ
「なんか、テツさんって、想像どおりかっこいい人だね~♪」

レンははじめてうちの親父に会って妙に嬉しそうだった。



「どこが?」


なにげに仲良くなってんのが、やっぱ気に入らなくて、ぶっきらぼうに答えていた。


「さっきバンドのこととか色々きいちゃったんだけど、今度ライブあるからおいでって言われたんだよねー
なんかいいよなーそういうの。」



「お前の親父さんだって、人気俳優じゃん?
そういうほうが、かっこいいんじゃねーの?」


うちの父さんなんか、バンドやってるってだけでプーだぜっていたったら、バンドやってる人ってそんなもんなんじゃないの?なんてのんきに言ってくる。


「まあ、確かに役者やってる時の父さんは、かっこいいけどね。
でも、テツさんみたいに、ガタイがよくてワイルドなタイプじゃないし、どっちかっていうと女顔だし・・・」


お互い無いものねだりなのかねなんて言って、レンはいつものアイドルスマイルで微笑んだ。





「あ、それとあの人のバンドのライブ行くなら、気をつけろよ・・・
この前のSAんときよか、ずっと危ないから。」


「ちゅーか、一緒に行けばいいじゃん・・・」


「俺、行きたくないもん。」



そういえば、リンダと出会った夜を最後に、父さんのライブに行ったことはなかった。

どんなに好きなバンドと対バンしてても、なんか嫌だったんだ。



リンダが、じっと父さんのことばかり見てる姿が想像できるから。




「ねえいいじゃん?どうせリンダさんとかもくるんでしょ?」


レンがしつこく誘ってくるから、考えとくとかあいまいな返事をして、無理やりその話題を終わらせた。






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