バンビ
「僕さ、生まれてからずっと12歳の時までママと二人でNYにいたから、父さんとちゃんとした生活したことなかったんだよね・・・」



なにかの流れで、そんな話題になって、ああこいつも俺と同じなんだって思ったら、妙に親近感がわいてきたりもした。




「別に、父親なんて一緒にいなくたって問題ないじゃん。
俺んちだって、未だにたまにしかオヤジの顔みねーもん・・・」




まだ、単身赴任とかで、ちゃんと生活費を入れてるような、バリバリ仕事してる父親ならわかるけど、うちのはそうじゃないからな。

逆に一緒に暮らしてると、母さんが大変だから別居してるみたいな感じだろうなって何となくずっと思ってた。

まあ、金がなくて母さんにたかってるような奴じゃないだけましかな?




「エイジは、お父さんの事が嫌いなの?」

いきなりビトがそんなことを聞くもんだから、少し戸惑った。

改めてそんなことを聞かれると、どうなんだろうって思うし。




「たぶん、嫌いな方だと思う。」




小さい頃は、好きだった気もしたけれども、いつからだろう?
中学に入った頃からか?父親に反抗するようになっていた。



なんだかんだ言ったって、ちゃんと働いて夜にはちゃんと家にいて、家族団欒で夕飯なんか食べながら晩酌してるような父親には憧れる。


「レンのとこみたいなのは、やっぱ羨ましいしな・・・」


何となくそう言ったら、ビトも凄くわかるって遠い目をした。



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