バンビ
「エッ!?」

いきなりきわどい質問をされて、今度はこっちが戸惑ってしまう。

やっぱ言い辛いことだし、リンダのことはレンにだってそんなに話してない。




「やっぱ、そんなに良いもんじゃなかったかもな?」





あの時は、リンダに無理やり連れ込まれて、こっちが犯されたみたいな感じになったくせに、それがきっかけで何となくあいつに惚れてしまっていた。




初めは嫌な気もしたけど、気持ちよかったのは確かなことで


でも、自分が無知で何もこちらから出来なかったことが悔しかったりしたわけで







ああ、一番嫌なことを思い出した。




何でリンダが、あんなことをしたのか・・・










ことが終わった後、リンダが俺に言ったんだ。


「ゴメンねエイジ・・・

あの人の一番大事なものが、欲しくなっちゃったの・・・」





はじめは意味がわからなかった。

わけもわからず、そのままグッタリしている俺にリンダは淡々と話してくれた。



「テツさんがみちるさんとキスしてるとこ見ちゃったんだ。」


いくら夫婦だってわかっていても、なんだか複雑で、ライブ中たまたま俺を見つけて、思わず奪いたくなったんだと、

そんな風に淋しげに話すリンダが、
とっても小さく見えた。



なんだよ…やっぱオヤジの代わりかよ・・・




それがずっと切なくて、やるせなくて、

でもそれでも良いと思った。
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