バンビ
ミヤコさんのアパートにつくと、早速二人はいそいそと焼肉の用意をはじめだした。


「そういえば、オイスカの新譜あるよ、聞く?」

僕が手伝えそうなことがないっぽいので、気を使ってミヤコさんがCDやらDVDやら出してくれて、適当に聞いててって言われた。

ミヤコさんの部屋は綺麗に整理されていて、男子が好きそうなフィギアとかも飾ってある。
飾り棚の下には、大量のCDやらレコードが山済みされていて、いかにもバンドやってる人っぽいなーってきがした。

しかも、デモ版みたいな音源が多いのが、それっぽい。

渡された音源も、まだ発売してないやつで、思わずスゲーって声を出してしまった。


「なんか久々にきたら、やけに綺麗になってるじゃん?
みゃーこらしくないなあ。」


カオリさんが、台所で野菜を切りながらそんな話しをしていた。



「最近ジロー君がよくきてくれて、勝手に整理してくれるんだよね。」




ああ、なんだ彼氏さんが几帳面な方なんだ・・・そう思ったらなんかおかしくなった。

いわれてみれば、男っぽい趣味だなって思ったし。



二人が台所で食事の用意をしている感じが、うちのお母さんを思い出させて、なんだかひどく安心した。

包丁の音が、凄く心地よくて、色っぽい感じも忘れさせてくれるみたい。


ちょっと古いタイプのこのアパートも、うちの雰囲気と似てるからかな?



僕は畳の上で何となくゴロゴロしながら、ずっと貴重な音源を聞いていた。
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