バンビ
「やなことがあったとかじゃなくて、よかった。
私そんな、慰めてあげたりとか出来ないもん・・・」


そんな風に言って笑うリンダに、いつも癒されててるんだって、

こいつは気付いてないんだろうな。


心は離れてるってわかってるのに、一緒にいて触れ合っている時だけは、なんだか幸せなんだ。

バイバイする時には、今まで以上に辛くなるってのがわかってるのに。



オーダーの焼ソバがくると、早く店を出たくて急いで食べ終わり、またビールを飲み干した。

ママが俺達に、さりげなく話を振ってきたりして、リンダは楽しそうに話していたけれども、俺はほとんど聞いてない。



早く二人きりになりたい・・・そんなことばかり考えていた。









ぼんやりと通りを眺めると、駅前をひっきりなしに車が通り過ぎていって、そのライトがたまにきらりと光っているのが見える。


終電もなくなる頃になると、酔っぱらった常連の男性とかがお店にやってきて、ママに話をふってくれていた。
そのおかげで、リンダもやっと俺の存在を思い出してくれたみたいだ。



「そろそろ行こうか?」



ぼんやりとしすぎたせいか、気がつかないうちにお会計が済まされていて、今日こそは自分の分も払おうと思っていたのに、またおごられるような形になってしまった・・・



例え年上でも、女におごってもらうってのはいい気がしないよな。

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