もしも、世界が美しかったら



泣いちゃダメ。

夏琅の前では、絶対に。


夏琅……人の泣き顔みるのが、
大嫌いだもんね。


親友に嘘つかせてまで、自分のせいで泣く私達を見たくなかったんだもんね。



「來…………」

気付けば夏琅の腕の中。

大人しく夏琅の胸にもたれると、トクン、トクンって夏琅の心臓が動いている音が聞こえる。

心地よい温さの夏琅の体。




――――ねぇ、神さま。

夏琅、温かいよ?

夏琅の心臓は動いてるよ?


あと二ヶ月で、

この温もりはなくなっちゃうの?

冷たくなっちゃうの?

この心臓は静かになっちゃうの?

動かなくなっちゃうの?


なんで?なんで、なんで、なんでなんで、なの………。


ぎゅっと夏琅の腰に手を回した。



「俺な………サッカー部辞めることになった。もう、運動できないって言われてさ」

「っ、そっか……」

「うん……」

どこか寂しそうな夏琅の声。


ダルいとか、めんどくさいとか、いっぱい言ってたけど……なんだかんだ言っても、サッカーだいすきだったもんね。


知ってる?

サッカーしてる時の夏琅、すごい楽しそうに涼介やチームメイト達と笑ってたんだから。





< 100 / 244 >

この作品をシェア

pagetop