もしも、世界が美しかったら
泣いちゃダメ。
夏琅の前では、絶対に。
夏琅……人の泣き顔みるのが、
大嫌いだもんね。
親友に嘘つかせてまで、自分のせいで泣く私達を見たくなかったんだもんね。
「來…………」
気付けば夏琅の腕の中。
大人しく夏琅の胸にもたれると、トクン、トクンって夏琅の心臓が動いている音が聞こえる。
心地よい温さの夏琅の体。
――――ねぇ、神さま。
夏琅、温かいよ?
夏琅の心臓は動いてるよ?
あと二ヶ月で、
この温もりはなくなっちゃうの?
冷たくなっちゃうの?
この心臓は静かになっちゃうの?
動かなくなっちゃうの?
なんで?なんで、なんで、なんでなんで、なの………。
ぎゅっと夏琅の腰に手を回した。
「俺な………サッカー部辞めることになった。もう、運動できないって言われてさ」
「っ、そっか……」
「うん……」
どこか寂しそうな夏琅の声。
ダルいとか、めんどくさいとか、いっぱい言ってたけど……なんだかんだ言っても、サッカーだいすきだったもんね。
知ってる?
サッカーしてる時の夏琅、すごい楽しそうに涼介やチームメイト達と笑ってたんだから。