もしも、世界が美しかったら
く、苦しい……っ!
トントンっと軽く夏琅の胸を叩くと、リップ音を残して夏琅は離れていった。
恥ずかしくて、手の甲で口元を押さえながら睨む。
「んな顔しても、來から誘ってきたんだからねー」
ふふん、とご機嫌の様子の夏琅。ニヤニヤしてる目の前の顔を、
いますぐひっぱたいてやりたい。
「んじゃ、教室には戻れないからしばらくここでサボろっか」
フェンスにもたれ座りこむ夏琅の隣に私も座る。
「なんで戻れないの?」
「だって……」
來の顔、真っ赤だし?
耳元で囁かれ、一瞬で顔に熱が集中するのがわかった。
慌てて夏琅に背をむける。
「そんな顔、クラスの奴らには見せれませーん」
クスクスと笑う声が背後から聞こえる。
うるさいよ、っと呟いて夏琅の肩に頭を預ける。
「うぉ、珍しく素直じゃん」
「たまには、ね……。
ねぇ、夏琅………」
「ん?」
「だいすきだよ」
そう言うと夏琅は何も言わずに、頭を撫でてくれた。
ずっとこのまま…………
時間が止まればいいのに。
そんな馬鹿みたいなことを、
本気で神様に祈ってみたんだよ。