もしも、世界が美しかったら



離れてても分かる。背丈も髪型もあれは間違いなく夏琅だ。

――――あ。

思い出した。あの匂い…。

同じクラスメートの小松さんだ。

何で……夏琅が小松さんと一緒にいるの?

用事って言って、毎日ナイショで小松さんに会ってたの?

ねぇ…夏琅。…なん、で???







「遅いよー!」

愛輝が顔を覗き込んでくる。

「………っ」

私は思わず愛輝に抱きついた。

「わわ、…」

私より小さい愛輝は少しよろめいて、数歩後ろに下がったけどギュウッと抱きしめかえしてくれた。

「來?どーしたの…??」

花梨が背中をさすってくれた。

「あ、のね…っ」

さっき見た事を全部話した。


「私ね…。夏琅には残りの時間で好きなことをして過ごしてほしいの…。」

でもね…………私だって夏琅と一緒に居たいの。

口には出さなかったけど、ずっと放課後に夏琅がどっか行くの嫌だった。

これでも我慢してたんだよ…?

なのに夏琅は他の女の子と一緒に居たの?

私と…私達と居るより小松さんと一緒の方が楽しいの?


「夏琅…………」

教えてよ…。


何が夏琅の幸せなの?












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