もしも、世界が美しかったら
「よしっ」
夏琅の意外な趣味…写真撮影。
クラス変えした日も使っていた
夏琅愛用の黒いデジカメ。
授業中や弁当のとき、放課後や遊んでるもいつも一緒。
携帯並に常備してるよね。現像した写真を貰ったことはないけど。
行事から普通の日常まで、たくさんの思い出が詰まっているそれを夏琅は掲げた。
「崎本くん!」
後ろから聞こえた声に振り向けば小松さんが駆け寄ってきた。
「おー、小松。今回はいろいろとサンキューな」
「こちらこそ!」
にこっと笑う小松さん。
ふわっとあの甘い香りがした。
「そっか、小松って軽音部の部長だったけ」
「うん、そうだよ」
涼介の言葉に小松さんが頷く。
「あのライブの管理者は、部長の私なんだ。…で、崎本くんに特別に出させてくれないかって頼まれてたんだ。」
「そーゆーこと!」
「……あ、写真撮るの?なんなら私が撮ろうか?」
小松さんが夏琅の手の中のカメラを指差す。
「本当?サンキュー」
小松さんにカメラを渡し、夕日をバックにして並ぶ。
「はい、チーズ」
この写真は、きっと最高の笑顔で写っていると思う。