もしも、世界が美しかったら
「―…っっ……ゲホゲホ…ッ…」
一瞬で真っ赤に染まる真っ白なシーツ。
何が起こったのかわからない。
普段は大人なしい花梨がいち早く動き、ベットの隣にいた俺を押し退けナースコールを押した。
「いや…っ…夏琅!!」
「っっゲホゲホゲホ…ッッ」
苦しそうに顔を歪めながら、何度も血を吐き出す夏琅。
背中に嫌な汗が伝う。
「はい、離れて!夏琅君!!わかるかなー夏琅くん???」
駆け付けた看護婦さんが、懸命に手をほどこす。
「集中治療室の方に運びます!タンカ急いで!!」
に運ばれていく夏琅。
俺たちも呆然とする体を、何とか動かし必死についていく。
治療室の扉が閉まった。
「いや!!夏琅!!夏琅っ!!!いやぁああ!!!」
扉の前で泣き崩れる來。
「夏琅ーー!!夏琅ーっっ!!!ああぁあぁあ…ッッ!」
「來!來っ!!落ち着いて!!」
「花梨!!どうしよっ!!夏琅が…っ夏琅がぁー…ッ…っっ」
「大丈夫!!夏琅は絶対に大丈夫だから……ッッ!!!」
肩を掴み叫ぶように言う花梨。
「夏琅は大丈夫だからっ…!!!私たちが信じてあげなきゃッッ」