もしも、世界が美しかったら



「―…っっ……ゲホゲホ…ッ…」

一瞬で真っ赤に染まる真っ白なシーツ。

何が起こったのかわからない。

普段は大人なしい花梨がいち早く動き、ベットの隣にいた俺を押し退けナースコールを押した。

「いや…っ…夏琅!!」

「っっゲホゲホゲホ…ッッ」

苦しそうに顔を歪めながら、何度も血を吐き出す夏琅。

背中に嫌な汗が伝う。


「はい、離れて!夏琅君!!わかるかなー夏琅くん???」

駆け付けた看護婦さんが、懸命に手をほどこす。

「集中治療室の方に運びます!タンカ急いで!!」

に運ばれていく夏琅。

俺たちも呆然とする体を、何とか動かし必死についていく。

治療室の扉が閉まった。


「いや!!夏琅!!夏琅っ!!!いやぁああ!!!」

扉の前で泣き崩れる來。

「夏琅ーー!!夏琅ーっっ!!!ああぁあぁあ…ッッ!」

「來!來っ!!落ち着いて!!」

「花梨!!どうしよっ!!夏琅が…っ夏琅がぁー…ッ…っっ」

「大丈夫!!夏琅は絶対に大丈夫だから……ッッ!!!」

肩を掴み叫ぶように言う花梨。

「夏琅は大丈夫だからっ…!!!私たちが信じてあげなきゃッッ」









< 141 / 244 >

この作品をシェア

pagetop