もしも、世界が美しかったら



「じゃあ早く出てこいよ!いつもみたいにバカみたいに笑えよ!」

それでも俺は叫ぶように言った。

「秋祭りでバンドすんだろ!?
みんなで笑って卒業すんだろ!?約束したじゃねーかっ!!」

涙で言葉がつまる。

「夏琅……お願い…だから…っ」

―――頼むから、死なないで



それから一時間近く経った。

連絡を受けた夏琅の両親も駆け付けてきた。

夏琅の母親は父親に支えられるようにして、泣いていた。


そして俺は…………
少し席を外していた。

由輝が来ない……………。

アイツは部活中だと思うから、
病院から直接学校の方に連絡してもらった。

きっと由輝のことだから、部活なんて途中で放り出して練習着のまま来ると思っていた。

しかし、いつまで経っても由輝は来ない。

電話帳から相原由輝を探して、
電話する。


プルルルルル…ッ

――――おかけになった電話番号は現在……

ピッ

「クソッ…」

何してんだよ、由輝…っ。

無意識のうちに前髪をかきあげ
クシャっと握り締めていた。

ポケットに携帯を入れて、みんなのところへ戻る。











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