もしも、世界が美しかったら
「由輝は?」
花梨の問いに、俺は静かに首を振った。
「そっか………」
「学校に連絡したはずなのに…」
静寂が場を支配した。
聞こえるのは誰かのすすり声。
神様……お願いします。
夏琅を連れてかないでください。
どうかドナーか治療方法を…っ。
ザワッ……!!
「……んと…で…か…!?」
「……忙…で…連絡…て……!」
「…はい!!」
あっちの方が騒がしい。
何かあったのだろうか?
「あ!先生……っ」
集中治療室から先生が出てきたのでみんな駆け寄る。
「夏琅は!?夏琅はどうなんですかっ!大丈夫なんですか??」
「残念ですが――……」
やめてくれ。言わないでくれよ。
俺は先生の言葉に、思わず耳を塞ぎたくなった。
その時………
「先生!!!」
年輩の看護婦が出てきた。
「先生っちょっとお話が!」
ただ事ではない看護婦の様子を見て、先生は「ちょっと失礼」と言って治療室に入っていた。
かなり慌てていた看護婦をみて
みんな不安を隠せない。
しばらくして真剣な表情をした
先生が出てきた。