もしも、世界が美しかったら



「みなさん……落ち着いて聞いてください。」

ゴクッと息を飲んだ。

先生はゆっくりと言葉を発した。



「夏琅くんの………………

ドナーが見つかりました。」


―――――――え…?

「今から手術を開始します」

頭がついていかない。

え?ドナー…見つかった?

じゃあ……じゃあさ……っっ


「夏琅は助かるんですか!?」

「まだ何とも言えません。夏琅くんの体力や、心臓との相性もあります」

先生は真剣な表情で話続ける。

「だけど、私たち医師も全力で手を尽します。」

―――みなさんも夏琅くんを
信じて上げてください。



先生がいなくなったあと、來が
崩れる様にしゃがみこんだ。

「良かっ…ッッホント良かった」

その言葉をきっかけに、再びみんな泣き叫んだ。

しかし、今度の涙は悲しみじゃなくて……喜びの涙だった。

「夏琅……がんばれよ」

この声は届いたのだろうか?




―――――

―――




手術室のランプが消えた。

閉まっていた扉が開くと同時に
そちらへ駆け寄る。

「せんせ…っ!夏琅は…」

來が医師にたずねる。










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