もしも、世界が美しかったら



「私も由輝と夏琅くんの仲の良さは知っているつもりだもの…。
そうだよね…みんなに見送られて逝きたいよね……」

顔を上げれば、涙ぐんだ明美ちゃんがいた。


「先生…あと何日くらいまで待てますか……?」

「そうですね……最大5日くらいといったところでしょうか」

「そうですか…」

明美ちゃんは伏せていた目を上げて、まっすぐ俺たちを見た。

「夏琅くん……早く目が覚めると良いね。」

そう言って微笑んだ。


顔を見合わせた後……、

「「ありがとうございます!」」

再び俺たちは明美ちゃんと医師に頭を下げた。



「じゃあ、お母さんは葬儀の方の段取りがあるから行くね…。」

「うん…」

「帰り遅くなると思うから利玖の家で食べてね。舞子ちゃんにはもう言ってあるから。」

「分かった…」

「じゃあね。」

「バイバーイ。」

車に乗り込む明美ちゃんを見送り俺と愛輝は病院に入る。

話し合いの結果、由輝の葬儀は
5日後まで伸ばしてもらえる事になった。

夏琅は3日以内に目を覚まさないと葬儀には行けなくなる。

……と言うか、夏琅もまだ助かった訳じゃない。









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