もしも、世界が美しかったら
「うん?」
「…よし!」
「え!?ちょッ」
いきなり愛輝の腕を掴んだ利玖は勢いよくグランドに走りだした。
「ちょ…待っ!!ギャァーーー!!!!!!」
バシャバシャと湖…もとい水溜まりに突っ込んでいく2人。
……と、
「ふぎゃ!??」
愛輝が奇声を上げると
「「…………あ」」
バッシャーン!!
盛大に水しぶきが。
「い、愛輝ー?」
さすがにヤバいと思ったのか、利玖は愛輝の前にしゃがみこむ。
「おーい、いつ……ぶっっ」
不意に勢いよく顔を上げた愛輝は目にも止まらぬ速さで利玖に飛び付いた。
バシャン!
「ちっ……。地面に頭でも打てばよかったのに」
「残念でしたー」
瞬時に後ろに手をついた利玖は、背中から倒れることはなかった。
悔しそうな顔で、利玖に向き合う形で利玖の太股辺りに座る愛輝。
平気でそんな事ができるのは、
2人が友達以上に幼なじみという深い関係だからなのだろうか?
それともただたんに愛輝が子どもなだけなのだろうか?
どっちにせよ……利玖には気の毒な話だ。
だって利玖の好きな人とは、何を隠そう愛輝なのだから。