もしも、世界が美しかったら



意識が途絶える寸前に感じたのは手から伝わる冷たい体温と………大切な人の笑顔だった。

俺子が目覚めたのはそれから一週間経ってからだった。


そして小晴の葬儀の日………。

「………ごめんなさい。帰ってもらえるかしら?」

「でも………」

「お願いだから、帰って。」

そう言って泣きながら頭を下げる小晴の母親。

「おい、葉子。そろそろ……」

出てきた小晴の父親は俺を見ると大きく目を見開いた。

そして………、

ガッッ

頬を殴られ地面に倒れる。

その衝撃で完治していない体が悲鳴を上げた。

「お前のせいで息子は死んだんだぞ!!分かっているのか!?」

胸ぐらを掴まれ怒鳴られる。

小晴の父親の言葉が鋭く強く心に刺さった。

「お前の顔など見たくない!さっさと失せろ!!今後一切その顔を見せるな!!!」

俺を突き放し葬儀会場の中に入っていく小晴の父親。

「玲君だったよね………」

「はい………」

「お墓参りとか、いいからね…」

貴方からあの子を解放してあげてちょうだい。

そう言って母親も会場に入った。

「すみませんでした………」

無惨に閉まる扉に頭を下げた。








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