もしも、世界が美しかったら



「テメェ……いい加減にしろよ」

ドアノブにかけた手が止まった。

振り向く相原に、いつもみたいな笑顔はない。

「いい加減にするのは碓水の方なんじゃないの?」

「……………。」

俺は無言で相原を睨む。

「分かんない?…………小晴くんは碓水に赤より青が似合うって言ったんだよ?」

「だから?」

「碓水のピアス…それインカローズでしょ?」

「……??」

俺に聞かれても分からない。

首を傾げる俺を見て、相原は微笑んだ。

「インカローズの宝石言葉はね」

“           ”

「…………、っ」

もう分かるでしょ?、そう言って相原は屋上から出ていった。

バタン…と閉まる扉。

一人残される俺。


―――俺、玲は青色が似合うんだと思うんだよね……。

不意に、小晴の言葉を思い出す。

―――でも………

――玲に伝えたい事があるから。

伝えたいこと、紅い色のピアス、インカローズ………。

宝石言葉は―……


“過去を癒し未来に幸福を”


気づくのが遅すぎたんだ。

でも………

間に合わなかった訳じゃない。

―――玲…幸せになれよ?

想い出の中の小晴が言う。







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