もしも、世界が美しかったら
―花梨side―
私達が立ち止まっていても
時間は止まることなく進んでいる
再び歩き出すまで、
待っててくれやしない。
授業中…私は振り向き後ろの無人の席を見た。
席の主は今日もいない。
学校には来てるんだけど、教室に入ってこない。
いや、きっと入れないんだ。
2学期になってから愛輝は滅多に教室に入らない。
何処かでサボってるのかもしれないし、もしかすると保健室で勉強しているのかもしれない。
仮にも私達は3年だし、勉強とかテストとか大変だけど…。
先生もクラスメートも誰も何も
言わなかった。
由輝を失っていちばん傷ついて
いるのは愛輝だ。
愛輝は優しい言葉をかけてくる
クラスメートが嫌になったのかもしれない。
由輝との思い出が溢れている教室が嫌になったのかもしれない。
それでも愛輝は学校に来ている。
由輝との記憶ばかりの町にちゃんと出ている。
逃げてるだけじゃない。
……ただ、歩きだすにはもう少し時間が必要なんだ。
愛輝は由輝が大好きだったから。
誰よりも大好きだったからね…。
私は出来る限りわかりやすくノートをまとめる。
イラストやカラーペンを使うなどして一工夫。