もしも、世界が美しかったら
しばらく話をして、俺は先ほど意味もなく買った林檎ジュースを並木にあげて教室をあとにした。
俺は女が嫌いだ。
学校に来ただけで、ギャーギャー言われてウザイ。
それも立派に学校に来ない理由の1つだ。
そんな俺が女に自分から話かけ、挙句の果てには何か物をあげるなんて……。
何してんだか。
もう二度と……誰とも関わらないと決めたのに。
目を閉じて脳裏に浮かぶのは
――――玲、っ!
真っ暗な雨の中…
助けを求める様に何度も何度も
自分の名を呼ぶ最愛の―――……
「チッ」
舌打をして顔を歪めた。
忘れるかのように頭を振る。
さっきの事は全部、気まぐれだと思いながら学校をでた。
――――
―――
――
―
「玲か?」
適当にふらついていると、後ろから名前を呼ばれた。
誰かから“名前”を呼ばれるなんて、何年ぶりだ?
なんて思いながら振り向くと、ガタイの良い5、6人のヤンキー。
しかも全員がリーゼントとか、アフロとか、オールバックとか、グラサンとかヒゲとか………。
とりあえずかなり古風な感じ…。
一世代…いや二世代くらい昔のヤンキー数名が立っていた。