もしも、世界が美しかったら



俺は目の前で苺パフェにがっつく細身の男―――理人に聞く。

「え?玲、なに?一口欲しいの?仕方ないなぁ。はい、アーン♪」

たっぷり生クリームを乗せた苺が目の前に差し出される。

「……………。」

俺はそれを無言で食べた。

さっき殴られた時に口内を切ったのだろう…血の味がする。

そして生クリームの甘い味が口いっぱいに広がり、苺の甘酸っぱい味は傷に染みた。

「美味し?」

「血の味がする」

「物騒なこと言うねぇ」

ハハハッと笑う理人。

「仕方ねぇだろ。誰かさんがいきなり殴って来んだしよ」

「イヤイヤ、感動の再開のあまりついボカッとな!」

先ほど俺を殴った延本もといノブが豪快に笑う。



――――何を隠そう……この古風なヤンキー達は俺の中学時代の連れたちである。

…………いや、みんながみんなコイツらみたいに時代が遅れている訳じゃない。

7割が古風、3割が今風といった割合。(もちろん俺は今風派)


んで、この中学時代の連れ達っつーのは……俺が一番関わりたくない連中。

それは今、ニコニコと笑いながらパフェを食べる理人だって例外じゃない。









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