もしも、世界が美しかったら
「―――……」
冷たい雨が体を打ち付ける。
腹部に当てていた左手を見てみれば、べっとり赤く染まっていた。
ここじゃまず人に見つからない。
雨の降る夜にこんな道を通る奴なんて、まずいない。
仮に誰か通ったとしてもどうせ俺と同類だろう。
その間もドクドクと流れる血…。
朝に発見されても、出血多量で助からねぇだろうな…。
だからといって、自分で助けを呼ぶことはおろか、指一本動かない。
うーん…と考えるも良い案なんて出てこない。
こんな状況だというのに、頭は無駄に冷静だ。
そんな頭にふ、と浮かんだ。
―――俺、死ぬのか?
やっと…………死ねる?
「は、はは……」
“死ねる”そう思うと渇いた笑い声が溢れる。
「は、はは……」
“死ねる”そう思うと渇いた笑い声が溢れる。
朦朧としてくる意識。
あぁ、死ねるんだ…。
やっと、解放される…。
後悔なんて無い。
未練なんて無い。
むしろ…………
そっと静かに目を閉じた。
―――――玲ー!
真っ暗な闇の中で、俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「こ…はる……」
そこで俺の意識は途絶えた。