もしも、世界が美しかったら
「碓水……大丈夫かな?」
「…………。」
「…いっぱい……血、出てた…。すごい…痛そうで…………私が助けなきゃ…って……」
そこまで言うと玄関に座り、膝に私を膝に乗せる利玖。
「利玖……?」
そっと見上げれば、抱きしめてくれた。
あったかい………。
人の温もりを感じて、心がひどく安心してるのがわかる。
「あいつは大丈夫だよ…。明美ちゃんも付いてるしな」
ゆっくり頭をなでてくれる利玖の手は、大きくて優しかった。
「ん…そうだね」
顔を上げて力なく微笑む。
「んじゃ…」
頭を一撫でしてから利玖は私を膝から降ろそうとする。
「………」
「………」
「…………」
「…………」
「……愛輝さーん?」
……が、私は必死に利玖の首にしがみついた。
「もうちょっと………」
まだ、この優しい温もりを感じていたいよ。
まだ…一人になりたくないの。
なぜか一人になりたくなかった
無性に寂しかった
誰かの温もりに触れていたかった
「ごめん、ね……」
小さく謝罪の言葉をつぶやくと
「別に……」
と言ってまた抱きしめてくれた。