もしも、世界が美しかったら



まだ……過去の罪からは逃げられないのか。

相原たちにお礼を言うと、何で刺されたか聞かれたので、手短に話した。


「で?」

「え?」

「お前は何でこんな時間にあんなとこにいたんだよ?」

俺は横を向いて、相原妹の顎をクイッと持ち上げた。

真っ赤になると思いきや…キョトンとした顔で俺を見ている。

相原兄が「どこに居たんだ?」って聞いてきたから「路地裏」と答えると相原妹はしばらく説教されていた。


「あ、目が覚めた?碓水君」

「え?」

振り向けば、ふんわりとした感じの可愛らしい女の人が立っていた。

きっと相原兄妹の母親だろう。

何となく雰囲気が似てるし…。

「………あ、はい。お世話になりました」

お礼を言い少し話をする。


病院へ行った方が良いと言われたが、大丈夫と言えば微笑んでそれ以上はなにも言ってこなかった。

相原の母親に言われて、なぜか葛城が風呂に行った。

葛城は「明美ちゃん」と呼んでるから、きっと親しい仲なんだろう。


相原母も部屋から出ていき、相原兄妹と3人になる。

「じゃ…。そろそろ帰るわ。」

俺は鞄を持って立ち上がった。







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