もしも、世界が美しかったら
まだ日も登っていない明け方…。
俺は相原家の玄関に立っていた。
目が覚めたら、枕元にはきちんとたたまれた制服が置いてあった。
きっと、俺らが寝てから明美さんが置いてくれたのだろう。
「……もう帰るの?」
後ろから声が聞こえ振り向くと、少し眠そうな明美さんが立っていた。
「…お世話になりました」
俺は明美さんに頭を下げる。
「ちゃんと…病院行くのよ?」
「……………」
何も言えないでいると、「また遊びにおいで」といってくれた。
「ありがとう…ございました」
もう一度、礼を言って相原家を後にした。
早く…あの家を出たかった。
決して嫌だだったんじゃない。
むしろ、その逆だ。
あれ以上、あそこにいれば…
1人に戻るのが嫌になってまう。
一度温もりを知れば……
その温もりを忘れられなくなってしまう。
もしも…俺に帰るべき家があるなら、毎日があんな感じなのだろうか?
今さらになって、相原家に泊まったことを後悔した。
相原愛輝の温もりも…
相原由輝の思いやりも…
明美さんの優しさも…
葛城の言葉も…