もしも、世界が美しかったら
ぎゅっと涼介の腕を掴んだ。
きっと、テンパってた私の力はそれ相応に強かったと思う。
「………っ…」
涼介が少し痛そうに顔を歪めた。
「來…落ち着けって」
由輝に腕を掴まれ、我に返った私は涼介の腕を離した。
「………ごめん。涼介…」
「夏琅…どうしたの?」
駆けつけてきた花梨が、冷静にたずねる。
「それが…走ってたら、いきなり倒れてさ……」
由輝が小さな声で答える。
私たちの中の不安だけが、徐々に増していく。
「だあーいじょうぶだって!夏琅の事だから、疲れが溜ってただけだってッ」
重い空気の中……
利玖が明るい声で励ます様に声をあげる。
「そういえば……夏琅ね?さっきの時間、体調悪いって言ってた」
すぐに元気になってたから、あんまり気にしてなかったけど…。
「じゃ、風邪こじらしたんだろ?バカは風邪引かないってゆーのにな」
「教室帰るときに、保健室よって帰るか〜」
「そうだね。」
大丈夫…、ただの風邪かなんかだよ。
私は自分に言い聞かせて、授業に戻った。
来週の休みまでには、治してもらわないと!