もしも、世界が美しかったら
「夏琅ぉ……」
呼んでる。來が俺を呼んでいる。
みんなの所へ行きたいのに足が動かない。
泣かないでって言いたいのに声が出ない。
必死に手を伸ばしても届かない。
何で?何で、だよ?
そうこうしているうちに離れていくみんな。
待って…俺だけ1人置いてかないでよ。
なぁ…なぁ……っ…!!
―――夏琅!
頭に響くのは俺の名を呼ぶ、仲間の悲痛な叫び。
「ッ」
パチッと効果音が付きそうな勢いで目を開くと、視界に映るのは真っ白な天井。
たぶん保健室。
――――あれは夢?
に、しては妙にリアルだったような…。
ぼんやりと天井を眺めていると、シャッとカーテンが開く音がした。
「崎本君…目が覚めた?」
声がした方を向けば、立っていたのは保健室の先生。
安心した様に微笑んでいる。
「あの………俺……」
「体育の途中に急に倒れたのよ?工藤さん達も心配して、ずっとここに居たんだけど…授業が始まったから帰ってもらったの」
俺が聞く前に聞きたい事を答えてくれる先生。
そっか…來たちに迷惑かけたな。
「ところで…崎本君」
不意に真剣な声になる先生。