もしも、世界が美しかったら



がんばって話を変えた夏琅の話にいち早く食い付いたのは愛輝だ。

「じゃあケーキ食べたいっ」

「ジュースって聞こえてました?愛輝さん」

「えーっ」

「えーっじゃねぇよ!つーか、病院にケーキはないから」

「あ、そっか!ぢゃ、ジュース買いに行ってきまーす」

夏琅から財布を受け取った愛輝は「みんな行こー」と言って、病室を出ていった。


「あ、俺も行くー」

「俺も行くわ」

「私も!」

利玖、涼介、花梨も愛輝に続く。

……しかし來だけは、座ったまま動かなかった。


「俺、コーラ飲みたいな」

ベットの上に置いてあった來の手を握ってニッコリと笑う夏琅。

「……わかったよ。由輝は?」

「じゃあ、コーヒーで」

「ん、了解」

そう言い來は部屋を出ていった。



5秒足らずの沈黙のあと……

「っはぁー…」と息を吐いて、背中からベットに倒れた。

「ゆきー、」

「あ?」

「あんがとな」

………よくゆーよ。

お前が話合わせろっつたんだろーが。

口には出さなかったが、顔に出ていたらしい。

俺を見て夏琅は困った様に笑っていた。








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