泡沫の君
「椎奈、夕食の準備ができたらしい。いくぞ」
「…………」
「椎名?」
七。
気付けばそばにいた、私の執事
執事のくせに敬語も使わなくて
生意気で
でも七くらいしかこの家には私と対等でいてくれる
存在が居なくて。
気付けば七が私は好きだったんだけど。
七は私に壁を作っていて
七がどんな家で産まれて
私と出会うまで、あの日までどんな所で
どんな風に生活してて、なんて
知ってるはずもなくて
だって私、七の本名すら知らないから―…